ブックタイトル【試し読み】Financial Adviser 2017年4月号

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【試し読み】Financial Adviser 2017年4月号

081 Financial Adviser986(昭和61)年の夏、勤務していた銀行が金融業界初のFP会社をつくるということで、出向したのがFP人生の始まりです。銀行員時代は融資業務の経験が長かったこともあり、企業の資金調達(借入れ)の相談もFP実務として扱っていました。銀行の目線で企業分析する習性を身につけていたことは大いに役立ちましたが、振り返ってみると、お客さまである企業のことを、今風に言えば「お客さまファースト」の立場で考えることに欠けていたと気づきます。お客さまの本質を見抜けるか 社員への賞与の支払いのために決算資金をいつも銀行借入れしていた企業がありました。いつもどおり融資の内諾をもらいましたが、銀行取引をコーディネートした担当者(筆者)の「社員の方への振込みは、私どもの銀行で手続きさせてください」という条件提示に社長は言葉を失いました。一見、当たり前の取引と思われますが、これまで社長は、賞与は現金で社員へ手渡すと銀行に話していたのです。「困った…」という表情の社長の言葉は震えていました。実は、これまで賞与を支払ったことがなく、いつも目的外の運転資金に使っていたからです。このときは資金繰りがうまくいったという理由で融資を取り下げたものの、その後の対応に苦慮したことは言うまでもありません。虚偽はさらなる虚偽で取り繕う可能性もありました。〝銀行対策?を行っていたことが明白になったのです。このような虚偽がわかると、銀行は「まさか、そんな単純な虚偽を…」と、目先の策に溺れた勘違いの経営戦略をとがめ、取引を打ち切る可能性もある内容でした。課題の本質に向き合うのがFP FPとしては、企業の課題を分析し財務内容をどのように改善するか、当然そこに役割があるはずです。しかし残念ながら、身についた習性は簡単に軌道修正することが難しく、自らも銀行の立場でお客さまを見ていることを実感しました。企業経営者にとっては、銀行に対する、ある種の畏怖があったのかもしれませんが、真の「困った」という課題の本質に向き合うことがFPの役割だと気づき、「経験の活かし方」を考えるきっかけになりました。身についた習性は簡単には変えられない有田敬三生活経済研究所代表取締役、CFPRありた・けいぞう都市銀行勤務中の1986年、金融界初のFP会社の設立に参画。その後、1999年7月、㈱生活経済研究所を設立し現在に至る。主に、中小法人、個人客層を対象にコンサルティング業務を行っている。真の意味での「お客さまファースト」を考えてみようvol.11